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化学グランプリ2009 第4問(物理化学) 解説

第4問 気体分子の吸着と脱着


<凡例>
問○ 分野・テーマ (難易度・平年比)
 解法。コメント。

問1 STM(走査トンネル顕微鏡)による画像測定 (易)

 視力検査。



問2 ラングミュア(Langmuir)の吸着等温式の算出 (やや易)

 問題文に書かれたヒントに従って、式の組み立てていく問題。

 マル1は、その直後に「脱着速度 vd は速度定数 kd を比例係数として、吸着している分子数に比例する」とあるので、この指示通りに式を組み立てて、 vd = kdNθとする。マイナスの符号は、基本的につける必要性はない。

 マル2は、「吸着と脱着速度が釣り合った状態は平衡反応とみなすことができる」との記述より、va = vd として、ka / kd、もしくは、kd / ka を絞り出すように式変形していく。最後にθ= の式に直せばOK。



問3 回帰線を引き、グラフを読み取る。 (標準)

 ん? まただ、この感覚。

 こんな問題を前(第1問問5)にも見た気がする。

 なんとなく、グラフに点がいくつかプロットしてあるような…。

 そう、それでこの問題はこんなふうに解くんだ。

「『図中のデータ点に合わせて引かれた直線の傾きと切片は、それぞれ…』」


 ま、よくあることさ、デジャヴなんて。


 さて、そういうわけで、まずはすべての点のできるだけ近くを通るような線、すなわち回帰線をまずは引きましょう。一次関数のグラフになりましたね?これを曲線にしちゃうのは、ちょっとひねくれてるよ。

 さあ、そしてどうする?
 そもそも、この図は、「(問2で)得られたデータ(ラングミュアの吸着等温式)に関して縦軸に p/V 、横軸に p をとってプロットしたもの」なのだから、この式を、一次関数形に変形していくのが筋。θ=V/V として、p/V = ● p + ■ の形になるように、むりやり変形していきます。

 すると、「(縦軸に p/V 、横軸に p をとってプロットしたグラフは)特殊な軸の選び方ではあるが、ラングミュアの吸着等温式をみればその意味が理解できるであろう」との記述通り、きちんと一次関数型に変形できるはずです。できなければ、問2の答えが、どこかおかしい、ということになります。エンドレスエイト。

 あとは、既視感に従って、グラフより、傾き(●)と切片(■)を求めましょう。

 ここで読み取り誤差が多少発生します。まあ、よっぽど変な回帰線を引かない限りは○になるでしょう。

 傾き(●)からV が、切片(■)とV からKの値が出て、この問題はクリアです。

 こういう式変形のテクニックは、大学入試でも使いますよー。

 今年(2009年)の東大前期の化学では、式変形をしていって、グラフを描く、という、この問題とは逆パターンの問題が出てましたねー。



問4 木炭の比表面積 (やや易)

 木炭1gの全ての吸着サイトに吸着する一酸化炭素のモル数(物質量) × アボガドロ数 × 一酸化炭素1分子あたりの表面積 で求める。

 木炭1gあたり、とあるので、問3で求めたVの値(木炭5gあたり)を5で割って、「木炭1gの全ての吸着サイトに吸着する一酸化炭素の物質量の値」とすべき、であろう、と思うのだが…?

 すると、公式で発表されている解答の5分の1が答えということに…?


 なお、表紙裏に「標準状態273 K,1.013 × 105 Pa (= 1 atm)での気体1 molの体積 = 22.4 L」と書かれているので、これを利用する。

 どうしても理想気体の状態方程式から導きたいという、急がば回れ、回って遅刻さね型の人は、「気体定数R = 8.314 J mol-1 K-1」を用いてもよいですが、ここで、生物系の人は、「えっ、J ってジュールのことだよな? なんで状態方程式に J なんだよ~~」とパニックに陥ることになります。ちなみに、東大では、「気体定数:R = 8.3×103Pa・l・K-1・mol-1」(2008年第2問)←※現在は「l」は「L」と表記することになっている のように、表記されています。親切ですね。

 さてさて、気体定数の単位に組み込まれた「J」とは一体何者なのでしょうか。

 理想気体の状態方程式 PV = nRT ⇔ R = PV/nT より、Rの単位は [Pa・L・mol-1・K-1] と表すのが常ですね。ただし、このときのRの値は、8.3×103です。

 まず、[L]をSI基本単位系に直します。
 体積は長さ[m]の3乗、[m3]で表しましょう。1 L が何 m3 か分からない、という人はいませんね? そう、1.0×10-3 m3 です。

 ここまでで、気体定数:R = 8.3 [Pa・m3・mol-1・K-1] となります。

 さて、1 Pa は、1 m2 の面積に 1 N の力が働くときの圧力でしたから、[Pa] = [N・m-2] と表されます。

 さらに、1 N とは、1 kg の質量をもつ物体に 1 m・s-2 の加速度を生じさせる力、のことですから、[N] = [kg・m・s-2] であり、[Pa] = [kg・m-1・s-2] と表されます。

 よって、気体定数:R = 8.3 [kg・m2・s-2・mol-1・K-1] となります。

 ここで、「J」とは、仕事(、エネルギー、熱量、電気量)の単位であり、1 J とは、1 N の力で物体を 1 m 動かすときの仕事ですから、(本当は向きも考慮します)

 というわけで、[J] = [kg・m2・s-2] となります。

 したがって、気体定数:R = 8.3 [J・mol-1・K-1] となるのでした。

 めでたし。めでたし。



問5 メソポーラスシリカ薄膜の表面積 (やや易)

 円柱の側面積が求められれば解ける。有効数字2桁なので、バリバリ近似できる問題。

 例えば、孔のあいていない薄膜の表面積は、(107)2×2 + 107 × 103 ×4 = 2×1014 + 4×1010 [nm2] と表せますが、
1014 と1010 では、10000倍の差があります。こんなの、有効数字2桁ならば、1010 の方は、十分無視できますよね。



問6 様々なタイプの吸着等温線 (標準)

 グラフを選ぶ問題です。私大入試なんかでは頻出ですかね。東大は描かせることの方が多いかな。

 さて、(a)の方は、表面が覆われてしまったら、それでおしまい、なので、吸着量(N)θが頭打ちになっている(イ)を選びます。

 (b)は、分子が吸着していくほど、表面積がどんどん増えていっていることになるので、その分、吸着量(N)θも加速度的に増えていくはずです。よって(ウ)。

 (ア)のような、変曲点(?)のあるようなグラフは、途中で吸着の機構に何らかの変化が起こらない限り、ありえないかな。

 (エ)、(オ)のように、吸着量(N)θが減っちゃうのは論外。反応速度じゃないんだから。



問7 微細孔をもつ多孔質物質の吸着等温線 (標準)

 「(一層目が吸着して、)ある値(孔の中が飽和蒸気圧となるような圧力)を超えると、その時点から孔の中に分子が集まり始め濃縮される(これを毛細管凝縮と呼ぶ)」とあるので、ある値を境に、途中で吸着の機構に変化があったことが読み取れます。よって、変曲点(?)のようなものをもつグラフである(ア)を選びます。

 よくよく見ると、(ア)のグラフは、(イ)のグラフと(ウ)のグラフをつなげたような形になっていることからも容易に判断できますね。



問8 触媒反応の化学反応式を作ろう! (易)

 有名反応です。

 (a)は、無機化学や、理論化学(物理化学)でも「平衡」を扱うときによく取り上げられる「ハーバー・ボッシュ(Haber-Bosch)法」ですね。センター試験でも出ます。

 (b)は、有機化学で登場する、エチレンの水素化ですが、これがエタンになることは、見た目からも明らかではないでしょうかね。



問9 被覆率の算出 (標準)

 問2と同じように解いていきましょう。

 問題冊子17ページに戻って、va、vdについて、p→pa、θ→θa と置換すれば、va、vdが求まります。

すなわち、
 va = kapaN(1-θa
 vd = kd
となりますね。

 気体Bの分圧 pb は、ここでは関与しませんよ~。

 さて、ここから、va = vd として、式変形していってもいいですが、以降は問2と全く同じ変形になりますよね?

 ですから、結果的に、ラングミュアの吸着等温式において、θ→θa、p→pa、K→Ka と置換すれば、求める式が算出されることとなります。


 よって、賢い人は、いきなり、問2マル2の式を置換し始めます。

Kp/(1+Kp) → Kapa/(1+Kapa) 



問10 イーレイ-リディール(Eley-Rideal)機構 (やや易)

 「反応速度 v は反応速度定数 k を比例定数として、吸着している気体Aの吸着分子数および気体Bの分圧 p bに比例するものとする」とあるので、この指示に従って、式を組み立てるだけです。「吸着サイトの総数はNとする」より、あー、Nを使うんやろなぁ、ということも分かります(笑)。凶悪な私大などですと、使わないこともありますが。

 吸着している気体Aの吸着分子数は、Nθa で表させることは、問題冊子p.17に、θ= Na/N と書かれていることからも明らかでしょう。すなわち、Na = Nθです。

 よって、v = kNθapb となるのですが、これを解答とするのは、反則でしょう。

 問9で求めたθa の値をちゃんと代入して、答えを出すべきです。大学入試では減点されますよ。



問11 近似 (標準)

 「この反応速度式はある条件下で気体Aの被覆率の影響がほとんどなくなり、気体Bの一次の反応式に変わる」とありますから、ある条件下で、v = ☆ミ pb (☆ミ は定数)と近似できる、ということですね。

 問10で算出された式をよく眺めてみます。が、θa が見つからないので、一段階前の式に戻ってみましょう。

 v = kNθapb

 k、N はもともと定数なので、θa を無視できる条件を考えます。

問9より、
 θa = Kapa/(1+Kapa) 
ですが、
この式をじーっと眺めていると、分母の1を無視することができれば、θa は1と、一定値をとることに気付きます。

 分母の1を無視するためには、Kapa >> 1 (Kapa が十分大きい) という条件があればいいですね。

 ここで、Ka も定数ですから、結果的に、pa が十分大きい、すなわち、Aの分圧が高ければいい、ということになります。
 


さて、そういうわけで、化学グランプリ2009の第4問は、
去年よりは難化した問題であったのでした。

式を問題文の指示に従って組み立て、それを変形していったり、現象を考察してグラフを選んだりと、大学入試の勉強にも役立ちそうな問題でした。

問題の難易度は適切で、程よく差がついた問題であったことでしょう。


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↑来年の化学グランプリ2010もよろしくお願いします。

あ…でも、二次選考についても記事書こうかなぁ。
 
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Tag : 化学グランプリ 一次選考 解説 物理化学 吸着等温式

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