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化学グランプリ2010 第1問(物理化学、電気化学)解説
第1問 「電気化学」の世界をのぞいてみよう!
<凡例>
問○ 分野・テーマ (独断と偏見による難易度評価)
解法。コメント。
問1 水の電気分解 (易)
水が酸化されて酸素が発生する反応といえば、他にフッ素と水の反応
2F2 + 2H2O → 4HF + O2
が有名ですね。
ウ、エは格好つけて、それぞれ「カソード(cathode)」、「アノード(anode)」と書いても○になるでしょう。
解説に書いてある通り、酸化反応が起きる電極が「アノード(anode)」であり、還元反応が起きる電極が「カソード(cathode)」なので、まとめると、
<電気分解>
「陽極」=「アノード(anode)」
「陰極」=「カソード(cathode)」
<電池>
「負極」=「アノード(anode)」
「正極」=「カソード(cathode)」
となります。
問2 ル・シャトリエの平衡移動の原理 (易)
選択肢に「右向きに移動したあと左向きに移動する」なんていう意味深なものがありますが、心理作戦でしょうか? 騙されないように!
さて、本問は文章中から「電位を低くする」=「e-(のエネルギー)が増える」ということが読み取れれば解けちゃいますね!
仮に読みとれなかったとしても、何やら図2にヒント、というか答えそのものが……(汗)
問3 硫酸水溶液の電気分解における酸素の発生反応 (易)
高3の人は書き慣れてるだろう、あの反応式。
問4-ク・ケ 水の電気分解に必要な最小電圧 (易)
クは前問で書いた平衡の式を
2H2O → O2 + 4H+ + 4e-
へと進めたいわけなので、ル・シャトリエの平衡移動の原理より、e-(のエネルギー)を減らす、つまり、電位を高くするとよいですね。
ケは指示通り、差を取ってください。もちろん値は正にしてくれないと困りますよ。
問4-コ 水1モルを電気分解するのに必要な最小の電気エネルギー (やや易/やや難)
まずは指定された単位に注目。kJ です。間違えて J で解答しないように。
そして、この問題は、電磁気学をかじったことのない人にはやや不利な問題か……?
「電位」とは、ある単位電荷が(その点において)もつ静電エネルギーのことであり、電位の単位「V(ボルト)」は、エネルギーの単位「J(ジュール)」と電気量の単位「C(クーロン)」を用いて、
[V] = [J/C]
と表されることから、水の電気分解に必要な最小電圧である 1.23 V に、水1モルの電気分解において必要となる電気量を掛けて、水1モルの電気分解に必要な最小な電気エネルギーを求めるわけです。
よって以下、水1モルの電気分解において必要となる電気量を求めます。
2H2O + 2e- → H2 + 2OH- ・・・(1)
2H2O → O2 + 4H+ + 4e- ・・・(2)
(1)×2+(2)として電子を4e- とした上で足し合わせると、
6H2O → 2H2 + O2 + 4H2O
よって、
2H2O → 2H2 + O2
以上より、水2モルの電気分解には、4モルの電子が必要であることが分かりました。
よって、水1モルの電気分解には、2モルの電子が必要ですね。
ゆえに、水1モルの電気分解において必要となる電気量Qは、表紙裏のファラデー定数
F = 9.65×104 C mol-1
を用いて、
Q = 9.65×104 C mol-1 × 2 mol
と表されます。
したがって、水1モルの電気分解に必要な最小な電気エネルギーは、
(9.65×104×2) C ×1.23 V = 2.37×105 J = 2.37×102 kJ
となるわけです。
問5 酸化されやすい金属 (易)
電位うんぬんを考えなくても、表1を見るだけで判断できますね。
問6 酸化還元反応 (標準)
表1を見ながら、どんな酸化還元反応が起こるのかを考えていきましょう。
まずは、例として挙げられている濃塩酸に純粋なAl板を浸した場合について考えます。

(クリックで拡大)
といったように、右上の物質と左下の物質が反応している様子が分かるでしょうか?
これが様々な酸化還元反応を標準電極電位によって並び替えた表の素晴らしいところです! そしてこれら反応は、酸化反応と還元反応の標準電極電位の差が大きい反応ほど起こりやすいという性質があります。
というわけで、シとスに答えを出してみましょう。
シ・スでは、熱水に窒素を吹き込みながら純粋なAl板を浸しています。窒素は不活性ガスなので無視でき、また本文中より(水の電離の効果はほぼ無視できることから)水素イオンも無視できることから、反応系に存在する物質は、AlとH2Oですね!
Al3+ + 3e- ← Al
から下方向に遠い還元反応が優先的に起こるわけですが、ここでH2Oを探してみると、アルミニウムの酸化反応の真下の反応しか候補に挙がりません。

(クリックで拡大)
よって、ペアで起こる還元反応は
2H2O + 2e- → H2 + 2OH-
ということが分かります。
よって還元される物質はH2Oであり、析出する物質は、気体は「析出する」とは言いませんから、Al3+とOH-が反応して生成する、固体のAlOH3ということになります。アルミニウムは錯イオンを形成して溶けてしまわないのか? 残念ながらこの問題だけではよく分かりませんが、おそらくOH-の濃度が小さいために、水酸化アルミニウムは溶けてしまわない、もしくは一部だけ溶けるのでしょう。まあいずれにしろ、「析出する」と書かれているので固体の物質を書くべきでしょう。
続いてセです。
セでは、硫酸水溶液に純粋なPt板を浸しています。つまり、反応系に存在する物質は、Pt、硫酸から電離したH+、SO42-、そしてH2O、あとは空気――窒素は不活性ガスなので、次に多いO2ですね。
Pt2+ + 2e- ← Pt
から下方向に遠い還元反応を探してみると、

(クリックで拡大)
O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O
しかないことが分かります。
ここで、キと書いてあるからといって、問3の「酸素が発生する平衡反応式」(→酸素を右辺に書きたくなるため、おそらくほとんどの生徒が
2H2O ←→ O2 + 4H+ + 4e-
と書いたと思われる)にひきずられて、キを
2H2O ←→ O2 + 4H+ + 4e-
と埋めてしまうと、永久に答えが出ないか、出たとしても間違った導出方法によって導かれた答え、ということになります。うーん、ちょっとした悪問ですね。
よくよく表1を見ると、電子は左辺に書かれていることに気付くことと思います。よって、表1中のキは
O2 + 4H+ + 4e- ←→ 2H2O
と埋めないといけないんですねー
てなわけで、還元される物質はO2ということになります。
一方のPtは酸化されてPt2+となって水溶液中に溶けだすかというと、そうではなく、即座にO2と反応し、PtOとなると言われています。
問7 銅の電解精錬における純銅板の質量増加分の計算 (やや易)
頻出題。ファラデーの電気分解の法則を用いる。「電流の向き」と「電子の進む向き」が逆という、よくあるひっかけもかませてありますね。
なお、「図4 電解製錬の実験装置」は「図4 電解精錬の実験装置」の間違いです。文章中では合ってるのに。
「製錬」は、鉱石から金属を取り出そうとする過程のことを言い、
「精錬」は、不純物を多く含んだ金属からなるべく純度の高い金属を取り出す過程のことを言うので注意。
問8 粗銅板で溶ける金属 (易)
これも頻出題。
というか、(5)! Cuはほとんど溶解しない、ってそれじゃ精錬の意味がないだろww
この問題の発展として、粗銅板に含まれるPbの挙動が問われる場合もありますね。答えはもちろん「溶解するが、溶液中の硫酸イオンと反応し、硫酸鉛(II)として沈殿する」です。
そして、問8と問9の直前の文章中では、銅の電解精錬の電圧として0.120 Vという、問9の計算には無関係な値が登場しています。この電圧の値をなぜか問9の計算に利用した、なんてことはないと信じたいものですが、ではこれは化学グランプリを受験してくれた生徒さん達へむごい引っ掛けを仕掛けるためのものなのかというと、実はそうではありません。
この0.120 Vという値、妙に低いと思いませんか? 乾電池の電圧だって1.5 Vですよ?
これは実は、銅の電解精錬においてあまり電圧が高すぎると、銀が溶液中に溶解してしまうことがあるという工業的理由によります。一般に銅の電解精錬の電圧は約0.3 Vと言われますが、本問では0.120 Vということで、だいぶ遠慮している感がありますね。このことによって問8では、Cu、Ag、Feはいずれも溶解する、の1番の選択肢が答えにならないようにしている、というわけです。
なお、実際の工業現場では銀が溶解するかどうかのギリギリまで(効率の問題から)電圧を高めるために、どうしても微量の銀が溶液中に溶けだします。この銀(I)イオンを沈殿させるため、塩酸などにより塩化物イオンを溶液中に加えておくことで、銀(I)イオンは塩化銀(I)として上手く沈殿してくれるというわけですね。
問9 粗銅板の銅の純度 (やや易)
Agの存在を忘れなければ、そんなに難しい問題ではありませんが、計算方法により公式解答(81.9 g)よりも多少前後しますね、これは。±1 gぐらいは許容範囲になるのかな? 答えだけしか書く欄がないので何とも判断しにくいところですね。一応、後で化学グランプリの公式サイドへ質問文を送っておこうかと思います。
問10 ネルンストの式を用いたダニエル電池の電圧予測 (やや易)
ネルンストの式に各数値を代入して、最後に差を取ればOK!
問11 ダニエル電池の電圧や電気量を大きくする方法 (やや易)
頻出の問題とはちょっと違った形式の問題ですが、少し考えれば分かる問題ですね。
問12 ダニエル電池 改 の電圧 (やや易)
ネルンストの式に代入して計算してください。
問13・14 ダニエル電池 Kai の放電前と放電後の電圧 (標準)
真面目に導出するなら、ネルンストの式などから条件を絞って、解いていかなければならない問題だが、これだと簡単と言えば簡単だが面倒くさい。
そこで時間が足りなくなるといけないので、「問13の答えは1つしかない」という隠れ条件を用いることにしよう(笑)
つまり、2価の陽イオンになるということ分かっており、また答えが1つしかないということが分かっている以上、ネルンストの式と表1の標準電極電位の表から判断するに、問13の答えはCdに決まっているということです(爆)。
そして問14は、放電前の電圧はまあいいとして、放電後は濃度変化を加味して導き出してくださいね!
……ふぅ、重い問題でした。
実際に受験した方々は、時間は足りたんでしょうか?
化学グランプリの問題は、どの問題もほぼ均等に点数が配分されていると明記されていますから、面倒くさい問題は後回しにした上で、後で時間があれば戻ってくるという戦法を取った方がよいでしょうね。
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<追記:8/14> 情報提供感謝です!
問14
電池Cの放電後の電圧は、
解答例では、
+0.337 -(-0.403 -0.0294) = 0.769 V
となっているが、
+0.336 -(-0.403 -0.0294) = 0.768 V
の間違いと思われる。
※より正確には、
+0.3356 - (-0.403 -0.0294) ~ 0.768 V
電池C(放電前→放電後)
正極の電位 0.3370 V → 0.3356 V
負極の電位 -0.4916 V → -0.4324 V
電池の電圧 0.8286 V → 0.7680 V
じゃーん 電気は大切にね ビリビリ
<凡例>
問○ 分野・テーマ (独断と偏見による難易度評価)
解法。コメント。
問1 水の電気分解 (易)
水が酸化されて酸素が発生する反応といえば、他にフッ素と水の反応
2F2 + 2H2O → 4HF + O2
が有名ですね。
ウ、エは格好つけて、それぞれ「カソード(cathode)」、「アノード(anode)」と書いても○になるでしょう。
解説に書いてある通り、酸化反応が起きる電極が「アノード(anode)」であり、還元反応が起きる電極が「カソード(cathode)」なので、まとめると、
<電気分解>
「陽極」=「アノード(anode)」
「陰極」=「カソード(cathode)」
<電池>
「負極」=「アノード(anode)」
「正極」=「カソード(cathode)」
となります。
問2 ル・シャトリエの平衡移動の原理 (易)
選択肢に「右向きに移動したあと左向きに移動する」なんていう意味深なものがありますが、心理作戦でしょうか? 騙されないように!
さて、本問は文章中から「電位を低くする」=「e-(のエネルギー)が増える」ということが読み取れれば解けちゃいますね!
仮に読みとれなかったとしても、何やら図2にヒント、というか答えそのものが……(汗)
問3 硫酸水溶液の電気分解における酸素の発生反応 (易)
高3の人は書き慣れてるだろう、あの反応式。
問4-ク・ケ 水の電気分解に必要な最小電圧 (易)
クは前問で書いた平衡の式を
2H2O → O2 + 4H+ + 4e-
へと進めたいわけなので、ル・シャトリエの平衡移動の原理より、e-(のエネルギー)を減らす、つまり、電位を高くするとよいですね。
ケは指示通り、差を取ってください。もちろん値は正にしてくれないと困りますよ。
問4-コ 水1モルを電気分解するのに必要な最小の電気エネルギー (やや易/やや難)
まずは指定された単位に注目。kJ です。間違えて J で解答しないように。
そして、この問題は、電磁気学をかじったことのない人にはやや不利な問題か……?
「電位」とは、ある単位電荷が(その点において)もつ静電エネルギーのことであり、電位の単位「V(ボルト)」は、エネルギーの単位「J(ジュール)」と電気量の単位「C(クーロン)」を用いて、
[V] = [J/C]
と表されることから、水の電気分解に必要な最小電圧である 1.23 V に、水1モルの電気分解において必要となる電気量を掛けて、水1モルの電気分解に必要な最小な電気エネルギーを求めるわけです。
よって以下、水1モルの電気分解において必要となる電気量を求めます。
2H2O + 2e- → H2 + 2OH- ・・・(1)
2H2O → O2 + 4H+ + 4e- ・・・(2)
(1)×2+(2)として電子を4e- とした上で足し合わせると、
6H2O → 2H2 + O2 + 4H2O
よって、
2H2O → 2H2 + O2
以上より、水2モルの電気分解には、4モルの電子が必要であることが分かりました。
よって、水1モルの電気分解には、2モルの電子が必要ですね。
ゆえに、水1モルの電気分解において必要となる電気量Qは、表紙裏のファラデー定数
F = 9.65×104 C mol-1
を用いて、
Q = 9.65×104 C mol-1 × 2 mol
と表されます。
したがって、水1モルの電気分解に必要な最小な電気エネルギーは、
(9.65×104×2) C ×1.23 V = 2.37×105 J = 2.37×102 kJ
となるわけです。
問5 酸化されやすい金属 (易)
電位うんぬんを考えなくても、表1を見るだけで判断できますね。
問6 酸化還元反応 (標準)
表1を見ながら、どんな酸化還元反応が起こるのかを考えていきましょう。
まずは、例として挙げられている濃塩酸に純粋なAl板を浸した場合について考えます。

(クリックで拡大)
といったように、右上の物質と左下の物質が反応している様子が分かるでしょうか?
これが様々な酸化還元反応を標準電極電位によって並び替えた表の素晴らしいところです! そしてこれら反応は、酸化反応と還元反応の標準電極電位の差が大きい反応ほど起こりやすいという性質があります。
というわけで、シとスに答えを出してみましょう。
シ・スでは、熱水に窒素を吹き込みながら純粋なAl板を浸しています。窒素は不活性ガスなので無視でき、また本文中より(水の電離の効果はほぼ無視できることから)水素イオンも無視できることから、反応系に存在する物質は、AlとH2Oですね!
Al3+ + 3e- ← Al
から下方向に遠い還元反応が優先的に起こるわけですが、ここでH2Oを探してみると、アルミニウムの酸化反応の真下の反応しか候補に挙がりません。

(クリックで拡大)
よって、ペアで起こる還元反応は
2H2O + 2e- → H2 + 2OH-
ということが分かります。
よって還元される物質はH2Oであり、析出する物質は、気体は「析出する」とは言いませんから、Al3+とOH-が反応して生成する、固体のAlOH3ということになります。アルミニウムは錯イオンを形成して溶けてしまわないのか? 残念ながらこの問題だけではよく分かりませんが、おそらくOH-の濃度が小さいために、水酸化アルミニウムは溶けてしまわない、もしくは一部だけ溶けるのでしょう。まあいずれにしろ、「析出する」と書かれているので固体の物質を書くべきでしょう。
続いてセです。
セでは、硫酸水溶液に純粋なPt板を浸しています。つまり、反応系に存在する物質は、Pt、硫酸から電離したH+、SO42-、そしてH2O、あとは空気――窒素は不活性ガスなので、次に多いO2ですね。
Pt2+ + 2e- ← Pt
から下方向に遠い還元反応を探してみると、

(クリックで拡大)
O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O
しかないことが分かります。
ここで、キと書いてあるからといって、問3の「酸素が発生する平衡反応式」(→酸素を右辺に書きたくなるため、おそらくほとんどの生徒が
2H2O ←→ O2 + 4H+ + 4e-
と書いたと思われる)にひきずられて、キを
2H2O ←→ O2 + 4H+ + 4e-
と埋めてしまうと、永久に答えが出ないか、出たとしても間違った導出方法によって導かれた答え、ということになります。うーん、ちょっとした悪問ですね。
よくよく表1を見ると、電子は左辺に書かれていることに気付くことと思います。よって、表1中のキは
O2 + 4H+ + 4e- ←→ 2H2O
と埋めないといけないんですねー
てなわけで、還元される物質はO2ということになります。
一方のPtは酸化されてPt2+となって水溶液中に溶けだすかというと、そうではなく、即座にO2と反応し、PtOとなると言われています。
問7 銅の電解精錬における純銅板の質量増加分の計算 (やや易)
頻出題。ファラデーの電気分解の法則を用いる。「電流の向き」と「電子の進む向き」が逆という、よくあるひっかけもかませてありますね。
なお、「図4 電解製錬の実験装置」は「図4 電解精錬の実験装置」の間違いです。文章中では合ってるのに。
「製錬」は、鉱石から金属を取り出そうとする過程のことを言い、
「精錬」は、不純物を多く含んだ金属からなるべく純度の高い金属を取り出す過程のことを言うので注意。
問8 粗銅板で溶ける金属 (易)
これも頻出題。
というか、(5)! Cuはほとんど溶解しない、ってそれじゃ精錬の意味がないだろww
この問題の発展として、粗銅板に含まれるPbの挙動が問われる場合もありますね。答えはもちろん「溶解するが、溶液中の硫酸イオンと反応し、硫酸鉛(II)として沈殿する」です。
そして、問8と問9の直前の文章中では、銅の電解精錬の電圧として0.120 Vという、問9の計算には無関係な値が登場しています。この電圧の値をなぜか問9の計算に利用した、なんてことはないと信じたいものですが、ではこれは化学グランプリを受験してくれた生徒さん達へむごい引っ掛けを仕掛けるためのものなのかというと、実はそうではありません。
この0.120 Vという値、妙に低いと思いませんか? 乾電池の電圧だって1.5 Vですよ?
これは実は、銅の電解精錬においてあまり電圧が高すぎると、銀が溶液中に溶解してしまうことがあるという工業的理由によります。一般に銅の電解精錬の電圧は約0.3 Vと言われますが、本問では0.120 Vということで、だいぶ遠慮している感がありますね。このことによって問8では、Cu、Ag、Feはいずれも溶解する、の1番の選択肢が答えにならないようにしている、というわけです。
なお、実際の工業現場では銀が溶解するかどうかのギリギリまで(効率の問題から)電圧を高めるために、どうしても微量の銀が溶液中に溶けだします。この銀(I)イオンを沈殿させるため、塩酸などにより塩化物イオンを溶液中に加えておくことで、銀(I)イオンは塩化銀(I)として上手く沈殿してくれるというわけですね。
問9 粗銅板の銅の純度 (やや易)
Agの存在を忘れなければ、そんなに難しい問題ではありませんが、計算方法により公式解答(81.9 g)よりも多少前後しますね、これは。±1 gぐらいは許容範囲になるのかな? 答えだけしか書く欄がないので何とも判断しにくいところですね。一応、後で化学グランプリの公式サイドへ質問文を送っておこうかと思います。
問10 ネルンストの式を用いたダニエル電池の電圧予測 (やや易)
ネルンストの式に各数値を代入して、最後に差を取ればOK!
問11 ダニエル電池の電圧や電気量を大きくする方法 (やや易)
頻出の問題とはちょっと違った形式の問題ですが、少し考えれば分かる問題ですね。
問12 ダニエル電池 改 の電圧 (やや易)
ネルンストの式に代入して計算してください。
問13・14 ダニエル電池 Kai の放電前と放電後の電圧 (標準)
真面目に導出するなら、ネルンストの式などから条件を絞って、解いていかなければならない問題だが、これだと簡単と言えば簡単だが面倒くさい。
そこで時間が足りなくなるといけないので、「問13の答えは1つしかない」という隠れ条件を用いることにしよう(笑)
つまり、2価の陽イオンになるということ分かっており、また答えが1つしかないということが分かっている以上、ネルンストの式と表1の標準電極電位の表から判断するに、問13の答えはCdに決まっているということです(爆)。
そして問14は、放電前の電圧はまあいいとして、放電後は濃度変化を加味して導き出してくださいね!
……ふぅ、重い問題でした。
実際に受験した方々は、時間は足りたんでしょうか?
化学グランプリの問題は、どの問題もほぼ均等に点数が配分されていると明記されていますから、面倒くさい問題は後回しにした上で、後で時間があれば戻ってくるという戦法を取った方がよいでしょうね。
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<追記:8/14> 情報提供感謝です!
問14
電池Cの放電後の電圧は、
解答例では、
+0.337 -(-0.403 -0.0294) = 0.769 V
となっているが、
+0.336 -(-0.403 -0.0294) = 0.768 V
の間違いと思われる。
※より正確には、
+0.3356 - (-0.403 -0.0294) ~ 0.768 V
電池C(放電前→放電後)
正極の電位 0.3370 V → 0.3356 V
負極の電位 -0.4916 V → -0.4324 V
電池の電圧 0.8286 V → 0.7680 V
じゃーん 電気は大切にね ビリビリ
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